トラブルの末に同僚を殺害、解体された遺体が各所から発見される
1994年3月3日に熊本県玉名郡南関町の九州自動車道玉名パーキングエリアのゴミ箱から切断された人間の左腕が発見されたことを皮切りに、山川パーキングエリアやJR熊本駅等でも遺体の一部が発見された。
被害者は福岡市中央区天神町の美容院「びびっと」に勤務する美容師、岩崎真由美さん(30歳)と判明。
犯人として同店経理担当の同僚、江田文子(38歳)が逮捕・起訴された。
犯行の経緯や動機
犯人の江田は1978年に結婚して専業主婦になるも、1989年頃から新居のローン支払いのために福岡市内で働き始めた。
その後、知人の紹介で美容室「びびっと」を経営している「オフィス髪銘家」に転職。同社の税務を担当する男性Aと性的関係をもつようになった。
江田が転職した一年後に被害者の岩崎さんが美容室「びびっと」へ入社。Aが岩崎さんの話題を出すようになったことから江田は岩崎さんとAが男女の関係にあると考え、嫌がらせ行為を行った。
また江田は興信所に岩崎さんの調査を依頼するもAと岩崎さんが交際している事実はなかった。それにより納得のいかない江田は自ら尾行、無言電話をかける等を行った。
1994年にAから別れを告げられた江田は原因が岩崎さんにあると考えて怒りを向けるようになった。
事件の2日前である2月25日、店を移る手続きのために岩崎さんが「オフィス髪銘家」に訪れ、江田と岩崎さんは口論になっている。
事件前日、江田はAから2人が会う際に利用していたマンションの部屋を解約した旨を告げられる。
事件当日の2月27日午前10時15分頃、江田は電話で岩崎さんを「オフィス髪銘家」に呼び出して口論の末に事前に用意していた出刃包丁で岩崎さんの首を複数回刺して殺害。
オフィスは経営者の自宅を兼ねており、経営者が帰宅する前に江田は岩崎さんの遺体をノコギリと出刃包丁で解体。頭部、両手、両脚、胴体に分けてスーツケース等で運び出した。
午後3時頃に江田は太宰府市の自宅へ遺体を運び、事務所に戻って血痕を拭き、遺体の一部をゴミ集積所に遺棄した。
3月2日、江田はレンタカーを利用して阿蘇山に遺体の両脚を遺棄。熊本駅のコインロッカーに胴体を入れて玉名パーキングエリアのゴミ集積所に両手を遺棄した。
また凶器の包丁は走行中の車内から捨てて遺体の頭部は自宅付近のゴミ集積所に遺棄した。
3月3日、玉名パーキングエリアのゴミ箱から切断された人間の左腕を清掃業が発見。同日に山川パーキングエリアでも右手が発見され、翌4日には別件の捜査をしていた警官により熊本駅のコインロッカーから胴体部分が発見された。また警察が山川パーキングエリアで回収していたゴミ袋から新たに左手が発見された。
警察は特徴やDNA鑑定から遺体を同一人物と断定、同月7日に岩崎さんの家族が提出した行方不明者捜索願によって遺体が岩崎さんのものであることが判明した。
その後、捜査線上に江田が上がり、遺体を包んでいた広告紙が江田の自宅付近で配布されていたことから同月15日に江田は逮捕され、自供により阿蘇山に遺棄された遺体の一部も発見された。
判決とその後
1994年7月1日、福岡地裁で江田の公判が開かれ、江田は正当防衛を主張。検察側は懲役17年を求刑した。
翌1995年8月25日、犯行に計画性があるとして地裁から江田へ懲役16年が下された。弁護側は控訴・上告するも棄却されて1999年9月3日に江田の刑が確定した。
なお、江田(現・城戸)は1996年12月1日に、獄中手記『告白―美容師バラバラ殺人事件』を発行している。