事件・事故

久留米看護師連続保険金殺人事件(黒い看護婦事件・吉田純子連続保険金殺人事件)

女性看護師4人による連続保険金殺人事件。看護師学校の仲間と、仲間の夫を殺害。

2002年1月から3月に福岡県久留米市において起こった女性看護師4人による連続保険金殺人事件。

「人間は嘘をつくが、金は裏切らない」が口癖だったという主犯格・吉田純子(42歳)は、相手の弱みにつけこんで仲間を洗脳し、高級マンション内での共同生活では仲間ら3人に対して「女王様と奴隷」という立場を強要、自身を「吉田様」と呼ばせていた。

酒や睡眠薬で昏睡状態にして、静脈への空気注射で保険金殺人を実行し2人を殺害、主犯格の吉田が死刑囚となった。

なお、2016年3月25日に死刑執行されており、女性死刑囚としては戦後5人目となる。

また、書籍『黒い看護婦』(新潮社)の発行により、事件の詳細が明らかにされている。


犯行の経緯や動機

4人は同じ看護師学校の同窓生だった。吉田純子(42歳)は福岡の貧しい家庭で生まれ祖立ったため、金銭欲が非常に強かった。「人間は嘘をつくが、金は裏切らない」と公言するほどで、吉田は十代の頃から周囲の人間を言葉巧みに操り、金を巻き上げていた。

堤美由紀(41歳)、石井仁美(42歳)、池上和子(43歳)は彼女の詐欺のターゲットとなり、金を搾り取られ、さらに、共犯として犯罪に荷担させられるようになった。

彼女らは事件後に吉田と同じマンションに部屋を購入しており、吉田の召使いのように扱われていた。

三人の看護師の中で、堤は吉田と一番深い関係にあり、肉体関係にあったという。毎日のように関係を迫り、拒絶されると過去の男性関係などをあげつらって激しく罵倒したという。

吉田と堤は同じ病院に勤務していたが、堤が男性関係のトラブルを吉田に相談したことがきっかけとなり、
二人は急接近した。

吉田は架空の「先生(男性)」をでっち上げ、彼にトラブル解決を依頼するという名目で堤から金を詐取した。

その後も、この「先生」をことあるごとにちらつかせ、堤を服従させていき、しまいには肉体関係まで迫るようになった。吉田は他二人(石井と池上)に対しても、堤の時とほぼ同じような手口で近づいていった。

夫婦関係に悩んでいた二人に対し、偽のトラブルをでっち上げ、その解決を「先生」に依頼するという形で金を巻き上げた。

そして、恩を売ることで取り巻きとしてこれから先の犯罪に荷担させた。吉田はこの三人や同僚から多額の金を詐取していた一方で、贅沢な生活を暮らしており借金返済のためにますます多額の金を必要としていた。

1998年1月23日、四人はまず池上の夫を殺害した。吉田は池上に、池上の夫が妻子の殺害を計画していると思い込ませた。

池上は以前も夫の女性関係のトラブルを吉田に「解決」してもらっていたので、本当に夫が自らと子供達を殺そうとしていると思い込んでしまったのだ。

4人は当初、池上の夫の食事に睡眠薬とカリウム製剤を盛ったが、被害者の体調に変化は全く現れなかった。そこでカリウム製剤を注射し、殺害する計画を立てた。

この計画の1回目は1月21日に実行されたが、池上の夫が目を覚ますなどして失敗に終わった。

2回目は1月23日に実行された。まず妻の盛った睡眠薬と酒(ビール)により池上を眠らせ、4人はカリウム製剤と空気を注入した。すると、池上の夫は死亡し、保険金3450万円が支払われた。

そのほとんどは吉田の手に渡った。池上はというと、子供達を養護施設に預けて、吉田の下で暮らすこととなった。

第二の事件は1999年3月27日に起きた。次の被害者は石井の夫だった。

吉田は池上の夫殺害の時と同様に、石井に夫が金銭トラブルを抱えていると吹き込み、保険金で解決するしかないと思い込ませた。

殺害手口は第一の事件と類似しているが、こちらの事件ではカリウム製剤は使用していない。

石井の夫は妻に盛られた睡眠薬と酒で眠らされ、眠っている最中にチューブを使って胃に直接酒(ウイスキー)を流し込まれた。

急性アルコール中毒による死亡を狙ったものだったが、石井の夫はなかなか死に至らず、業を煮やした吉田は空気注射を指示した。すると、石井の夫の容態は急変し、救急車で運ばれ、病院で息を引き取った。

その結果、保険金3300万円や被害者の退職金が支払われたが、やはりほとんどが吉田の手に渡った。

詐取した保険金で、吉田たちは久留米市内の高級マンションを購入し、主犯格の吉田は、海外旅行や高級エステサロン通いなど、贅沢の限りを尽くしていた。

石井の自供により事件発覚、逮捕へ

このままうまくいくと思われたが、2001年8月、石井が警察に吉田からの脅迫を相談し、事件が発覚した。

石井は2000年にも殺害未遂には終わったものの、堤の母親殺害の実行犯をやらされていた。さらに、吉田から多額の金を要求された上に子供達まで手放すよう言われ、精神的に限界に到達していた。

石井は当初、石井の夫殺害について伏せていたが、この一件をきっかけに警察は吉田らの周辺を捜査し始めた。

2001年8月、石井は犯した罪を後悔し、親族の助言もあって警察に自首。

その後、捜査の中で前述の一連の事件以外の犯行も明らかになった。

2000年5月に堤の母親をインスリン注射で眠らせてから絞殺し、金を奪おうとした殺人未遂事件を起こしていたことが発覚。

さらに、1975年にも、同僚の看護婦から500万円を搾取していたのをはじめ、数々の余罪が発覚。被害総額はなんと約2億円にものぼることが明らかとなった。

そして2002年4月28日、石井の自供に基づく裏付け捜査の結果、警察は吉田と堤は同僚への詐欺で、池上は石井への脅迫により逮捕された。もちろん石井も夫殺害の容疑で逮捕された。

判決とその後

2004年9月24日、福岡地裁は吉田を主犯格であると認め、死刑を言い渡した。

共犯であった堤と石井は、それぞれ無期懲役と懲役17年の判決が下りた。池上は判決前に子宮ガンにて病死したため、公訴棄却されている。

吉田たちはそれぞれ控訴したが、高裁はこれらを棄却。堤と石井は上告しなかったため、刑が確定した。

吉田は上告したが、最高裁で棄却され、刑が確定。吉田純子死刑囚の死刑は2016年3月25日午前に執行された(享年56歳)。ちなみに、死刑執行された女性死刑囚としては、戦後5人目となった。

この事件は、2004年11月に出版された単行本『黒い看護婦』(新潮社)にて全容が書かれた。この本は、森功のノンフィクション書籍である。

森は『週刊新潮』の編集部員としてこの事件について取材を開始し、事件発覚から判決までのおよそ2年半を追跡し、『週刊新潮』および『新潮45』にレポートを掲載した。このレポートをまとめたのが「黒い看護婦」である。


また、看護師による連続殺人事件として「大口病院連続点滴中毒死事件」が、2016年9月に起こっている。

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