事件・事故

名古屋大学女子学生殺人事件

「人が死ぬところを見たかった」タリウム少女は斧で殺人を犯した。

名古屋大学女子学生殺人事件とは、2014年12月7日に愛知県名古屋市で発生した名古屋大学の女子大生が起こした殺人事件である。そのほか、女子大生が過去に起こした一連の事件も含まれる。

概要

知人女性殺害

2014年(平成26年)12月7日、名古屋大学の当時19歳の女子大生は、宗教の勧誘で知り合った女性(当時77歳)と宗教団体の集会に2人で参加した。

集会が終了した昼ごろ、「聞きたいことがたくさんある」と持ち掛け、女子大生は女性を名古屋市の自宅アパートに誘い込んだ。用意していた斧で数回殴り、マフラーで首を絞めるなどして殺害。

遺体に服を着せ、マフラーが首に巻かせた状態で風呂場の洗い場に横たわらせ、「実験結果として記録を残すため」に女性の写真を4、5枚撮った。翌日に宮城県仙台市の実家に帰り、自宅アパートに遺体を1ヶ月以上放置した。

被害女性の夫が千種警察署に家出人捜索願を提出し、同署が被害女性を捜していたところ、最後に接触したのが女子学生だったことが判明。女子学生は愛知県警察からの連絡で、2015年1月26日に愛知県名古屋市に戻り、翌27日に千種警察署で任意の事情聴取を受けた後で署員が女子学生とともにアパートに入り、遺体を発見したことで、殺人罪で逮捕された。

余罪

殺人事件の捜査の過程で、高校時代に同級生の男子生徒及び中学時代の同級生だった女子生徒に硫酸タリウムを飲ませた事件、大学時代に帰省していた仙台市の実家近くの住宅を放火しようとした事件がそれぞれ発覚した。最終的に以下の罪状で、名古屋地方検察庁から起訴された。

  1. 2012年5月27日 – 仙台市のカラオケ店で、劇物の硫酸タリウムを飲み物に混ぜ、中学時代の同級生だった女子生徒に飲ませた殺人未遂罪
  2. 2012年5月から7月 – 通っていた仙台市の高校で、タリウムを飲み物に混ぜ、同級生の男子生徒に飲ませた殺人未遂罪
  3. 2014年8月29日から30日 – ペットボトルで製造した火炎瓶に点火し、仙台市の住宅の縁側に置き、熱で窓ガラスを割ったとする火炎瓶処罰法違反と器物損壊罪
  4. 2014年12月7日 – 名古屋市で、宗教勧誘で知り合った女性を誘って、斧で殴ってマフラーで絞めたとする殺人罪
  5. 2014年12月13日 – 仙台市の住宅(前述と同じ)の郵便受けに、引火性の高いジエチルエーテルを流し込んで火をつけたとする殺人未遂罪と現住建築物等放火未遂罪

被告人

女子学生は、トップクラスの成績で名古屋大学に進学。「変わっているが、友人も多く、明るい子だった」と、高校時代の知人らは評する。女子学生は、昔から劇物の硫酸タリウムを所持したり、Twitterに「酒鬼薔薇君もタリウム少女も大好きですよ」などと書き込みをしたりするなど、人を殺すことに異常な興味を示し、取調べでも「子供のころから人を殺してみたかった」と供述した。

薬品への異常な執着

タリウムは法律で18歳未満への譲渡を禁止されているが、女子学生は母親の実家のある山形県の薬局で年齢を偽り、事件に使用したタリウムを入手。捜査関係者によると、大学入学直前には、実家近くの薬局でも大学からすでに渡されていた学生証を使い、タリウムを購入した。

女子学生のものとみられるツイッターには前年11月、「ギ酸タリウムの妄想をして息が上がっていた高2の春」「結局在庫がなくて硫酸タリウム買ったんだけどね」「硫酸タリウムの半数致死量は1グラム(成人男性)だろ?で、未開封の硫酸タリウム瓶には25グラム」などの書き込みがあった。

事件について

殺害の動機を「人が死ぬところを見たかった」と語った。抵抗された女性に「殺すつもりなの」と聞かれたため「はい」と答えたと語り、「女性に『どうして』と言われたので『人を殺してみたかった』と言い(女性は)倒れました」と供述。「『人を殺してみたかった』という動機は少年犯罪に多いので、自分も少年のうちにやらなければという固定観念があった」と説明した。

逮捕後の2016年5月から医療施設で投薬治療を始め「まだ人を殺したいという考えが浮かぶこともあるが、治療を始めて(頻度は)少なくなった。人を殺さない自分になりたい。人を殺す夢を見ると絶望感を覚える」と話しているが、一方で控訴審の被告人質問では「1日に5~6回殺意が浮かぶ」といった発言が行われている。

裁判

第一審(名古屋地裁)

2017年1月16日に、名古屋地方裁判所で裁判員裁判が開かれた。被告人は殺人事件と放火未遂事件については認めたものの、タリウム事件については「観察目的」と主張して殺意を否定し、弁護側は非常に重い精神障害を理由に「責任能力はなかった」として、全ての事件で無罪を主張した。

1月19日の被告人質問では、薬物治療によって「極端だった気分の波が穏やかになった。まだ人を殺したいとの思いはあるが、頻度が少なくなった」と述べた。さらに、「妹や大学の友人2人も殺そうと思ったことがある」と述べた。

2017年3月24日、名古屋地裁はタリウム事件の殺人未遂を認めた上で「複数の重大かつ悪質な犯罪に及び、有期刑では軽過ぎる」として、被告人に求刑通り無期懲役判決が言い渡された。4月5日に被告人が名古屋高等裁判所に控訴した。控訴する理由について、「判決の内容だと、人を殺さない自分になりたいという目的の達成が難しい」という説明を行っている。

第二審(名古屋高裁)

2018年3月23日、名古屋高裁(高橋徹裁判長)は控訴を棄却した。高橋徹裁判長は、各事件時の精神状態は、そううつ病の軽そう状態にとどまり、発達障害が動機に影響しているものの限定的だったと指摘して、一審同様に完全責任能力を認めた。

硫酸タリウム事件については、混入時に周囲の状況を確認するなど冷静に行動しているほか、致死量の知識もあったことから「被害者が死亡する可能性を十分認識しながら犯行に及んだと推認される」と述べた。被告側は判決を不服として、最高裁に上告した。

第三審(最高裁判所)

2019年10月15日に最高裁判所(林景一裁判長)は上告を棄却し、無期懲役とした一審二審判決が確定した。

その他

事件当時女子学生は19歳だったため、少年法第61条に基づき匿名報道となったが、週刊新潮は殺人容疑で逮捕された女子学生の顔写真と実名を掲載して、生い立ち等を実名報道した。

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