事件・事故

SMクラブ下克上殺人事件

経営者に不満を感じた双子の店員が共謀殺人、コンクリート詰めにして遺棄

陸田真志(25歳)は自分を解雇しようとたくらむ経営者2人に対して腹を立て、1995年(平成7年)12月21日と22日に、双子の兄・賢志(25歳)と共謀して経営者2人を殺害し、その後1人から約4000万円強奪した。

さらに、2人の経営者の遺体を他の同僚ら3人に命令してコンクリート詰めにし木箱に入れて鹿島港(茨城県)に遺棄した。

その後陸田らは逮捕され、真志はこの犯行の首謀者として認定され、その殺人の計画性や残忍性などから東京地裁、東京高裁、最高裁から死刑判決を下された。

犯行の経緯と動機

陸田はデザインを勉強すべく渡米したが、なかなか人間関係がうまくいかなかった。

とりわけ、自分が信じていた人に裏切られたので、人間不信に陥り、金銭だけを信じるようになった。その結果、数多くの暴力事件を繰り返し起こし、路上強盗や美人局などの犯罪に手を染めることになった。その結果、逮捕されることになり、保釈と同時に日本に帰国した。

帰国後は兄と共に五反田にあるSMクラブで働き始めた。このクラブは経営者Aによって経営されている。

Aの経歴は慶応義塾大学を卒業し、大手の不動産企業に就職したがわずか1年で退社した。その後風俗コンサルタントから風俗経営のノウハウを学び、1993年頃から自ら風俗経営を始めるようになり、このSMクラブを含めて計6店舗の経営を行っていた。

しかし、店舗の売り上げは伸び悩んでいたため、従業員に対してクラブの売り上げ次第で売り上げの5パーセントを報奨として出すことを約束した。陸田は元来、金銭に対する執着心が強かったので張り切りわずか1か月で月の売り上げを1000万円以上にまで伸ばした。

しかしAは約束を守らず報奨金を陸田に1円たりとも渡さなかった。それどころか、陸田に対し「文句があるなら辞めろ」と迫った。このことが原因となり、陸田はAに強い不信感を抱くようになった。

そのうちAが新しい店長としてBを連れてきた。すると、陸田の不信感はますます募った。というのも、Bは店長として経営能力がなく、実際には陸田が経営を担当していたからだった。

経営の方針をめぐってBは陸田と対立し、しまいにはAと相談して陸田兄弟を解雇に追い込もうとした。ところが、陸田に事前に知られることになり、陸田は解雇される前に兄、さらに経営者2名A・Bに不満を持つ同僚を引き込んで、殺害計画を実行する。

12月21日、まず陸田兄弟は、勤務明けにBが眠っているところを狙いを定め、兄弟で共謀し、事前に準備していたバタフライナイフや斧を使って殺害した。

ところが賢志は、Bを殺したことにショックをうけてしまい体調を崩してしまった。そこで、翌日の12月22日に従業員の面接があると口実をつくってAを呼び寄せ、真志は別の同僚(元暴力団員)と一緒に共謀してAを殺害した。

A、Bの遺体は他の同僚ら3人に命じてコンクリート詰めにした。その上で木箱に入れて、茨城県南部にある
鹿島港に遺棄した。

その後、真志はAのカードを使って預金口座から現金を約4000万円引き下ろし、強奪した。しかし、Aの両親から警察に捜索願いが出され、その捜索の結果、Aの口座から預金を引き出した同僚のCらが詐欺の容疑で逮捕さ
れた。

経営者の失踪後、真志らが経営を引き継いでいることを不審に思った警察が厳しく追及したところ犯行を自供。ちなみに、真志は逮捕までに店長として約1億円の売り上げを荒稼ぎしていたという。

真志は獄中にいる間に哲学に強い関心を抱き、自らが犯してしまった罪の重さに気がついたという。裁判では遺族に反省の弁を述べている。

しかし後述の通り、真志はこの事件の犯行の首謀者として認定され、その殺人の計画性や残忍性などから東京地裁、東京高裁、最高裁とも死刑判決が下されている。

判決とその後

1998年6月5日、東京地裁は真志に死刑、兄の賢志に無期懲役、共犯の元暴力団員に懲役15年を言い渡した。

真志は控訴したが、東京高裁はこれを棄却。最高裁においても「人の命を犠牲にして店を乗っ取り、収益を奪おうとした一連の犯行は悪質極まりなく、周到に準備した計画的犯行で、殺害方法も凄惨かつ残虐という他ない」として上告が棄却され、死刑が確定した。

陸田真志の死刑は2008年(平成20年)6月17日に東京拘置所において執行された。

同じ日には、宮崎勤(東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の犯人)や他1人の死刑囚(宮城県保険金殺人事件の犯人)についても死刑執行されている。

宮崎勤幼女連続殺人事件 多数映像化された戦後類をみない連続殺人犯 1989年7月23日、宮崎勤が東京都八王子市美山町で女児にわいせつ事件を起こし...

なお、陸田は、気鋭の女性哲学者の池田晶子と一緒に『死と生きる―獄中哲学対話』(新潮社)を1999年2月に出版している。この本は懊悩する魂の遍歴の果てからの2人の間でなされた往復書簡となっている。

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