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鬱漫画・トラウマ漫画まとめ(※ネタバレあり)

Contents
  1. 本記事では鬱漫画30作品を紹介します…
  2. 1.「デビルマン」著:永井 豪
  3. 2.「やったねたえちゃん!」著者:カワディMAX
  4. 3.「アシュラ」著:ジョージ秋山
  5. 4.「四丁目の夕日」著:山野 一
  6. 5.「ぼくらの」著:鬼頭 莫宏
  7. 6.「最終兵器彼女」著:高橋 しん
  8. 7.「スパイダーマン」著:池上 遼一
  9. 8.「洗礼」著:楳図かずお
  10. 9.「鉄腕アトム」著:手塚治虫
  11. 10.「四谷怪談!」著:玉川ユキ
  12. 11.「なるたる」著:鬼頭莫宏
  13. 12.「バジリスク 〜甲賀忍法帖〜」著:せがわまさゆき 原作:山田風太郎
  14. 13.「ザ・ムーン」著:ジョージ秋山
  15. 14.「魔法騎士レイアース」著:CLAMP
  16. 15.「魔物語」著:松本洋子
  17. 16.「空が灰色だから」著:阿部共実
  18. 17.「ちーちゃんはちょっと足りない」著:阿部共実
  19. 18.「ヒミズ」著:古谷 実
  20. 19.「僕はラブソングが歌えない」著:高井唯人
  21. 20.「先生の白い嘘」著:鳥飼 茜
  22. 21.「血の轍」著:押見 修造
  23. 22.「ミスミソウ」著:押切 蓮介
  24. 23.「漂流教室」著:楳図かずお
  25. 24.「おやすみプンプン」著:浅尾いお
  26. 25.「僕たちがやりました」著:荒木 光
  27. 26.「ぼくらのへんたい」著:ふみふみこ
  28. 27.「少女椿」著:丸尾末広
  29. 28.「ザ・ワールド・イズ・マイン」著:新井英樹
  30. 29.「恋の超時空砲」著:駕籠真太郎
  31. 30.「ありがとう」著:山本直樹

本記事では鬱漫画30作品を紹介します…

「鬱(うつ)漫画」というのは、ストーリーに陰湿な部分があったり、気分が悪くなるような描写があったりする、いわゆる「読んでいると気分が落ち込んでしまう漫画」の事です。

アングラなネタや暴力シーン(当然、強姦などの描写も含む)があり、基本的には救いようのないバッドエンドであるといった点から、読んだ後かなり気分が滅入る、、、そんな作品群です。

しかし、作品によっては、社会問題の根源に迫るようなテーマや、人間の本質・核心に迫るような作品も多いため、「鬱漫画」というジャンルに、ファンがいるというのも事実です。

あまりに救われない主人公や、作中人物を取り巻く絶望的な環境などへの同情や共感から、一種のカタルシスを得られる場合がある、ということも、ファンがいることの一因なのかもしれません。

それでも、驚くほどに、これらの作品群は救いようがない結末を迎えるものがほとんど。

しかも、エロ・グロ・ナンセンスなんていう表現のオンパレード状態ですから、その点で不快感をもつ方がいたり、実際に地域によっては「有害指定図書」に指定されてしまっている場合もあります。

「それでも読んでみたい…!」という稀有な方々は、ぜひ、以下の作品を読んでみて下さい。

ここから先はあくまで、自己責任でお読みください。トラウマになっても、責任はとれませんので。。。(私自身、もう2度と読みたくない作品も含んでいます…そういうことです。)

ちなみに紹介順に特に意味はありませんので、悪しからず。

1.「デビルマン」著:永井 豪

主人公の不動明は、居候先の娘、牧村美樹と共に名門学院に通う普通の高校生です。ある日、不良に絡まれていた2人を、明の親友の飛鳥了が助ける場面から物語ははじまります。

明は了に屋敷の地下へと招かれ、悪魔の模造品を見せられ、さらにそれにまつわる「デーモンの復活」の話、そして自らデーモンと合体しようとした了の父親の末路について聞かされます。 

了はデーモンの魔の手から人類を守りたいと言うのですが、自分ひとりでは抱えきれないため、親友の明も一緒に戦ってほしいと懇願しました。明もまた、親友と人類のために立ち上がることを決意します。そして「デーモンに対抗するためのデーモンの力」を手に入れるべく、サバト(悪魔を呼ぶ儀式)を開き、了と共にデーモンを呼び寄せるのでした。

サバトにより、明と了はデーモンの召喚に成功します。しかしなぜか了には取り憑かず、明にだけ襲いかかりました。人間とデーモンの合体は互いの理性のせめぎ合いで、負けた方は勝った方に意識を奪われてしまいます。明は、自分に乗り移ろうとしたアモンというデーモンになんとか打ち勝ち、デーモンの力と人間の心を併せ持つ「デビルマン」となることができました。

デビルマンとなった明は了の指示のもと、次々によみがえるデーモンたちと死闘をくり広げていきます。

デーモンは残虐で非道、そして特殊な力を持っており、時にはデーモン同士で合体したり、殺した人間を取り込んだりすることができます。

やがてデーモンはデビルマンの存在そのものに目をつけはじめ、大量のデーモンが人間たちと合体し、人間社会を狂わせはじめるなど、狡猾にデビルマンを追い詰めはじめました。人間になりすましたデーモンたちは、国の中枢人物となり、戦争まで起こしていくのです。

人間たちもまた、誤った考えや情報をもとにデーモン狩りをはじめ、人間同士で争い、殺し合いをはじめてしまいます。

これらすべては了が最初から危惧していたことで、その通りに人間世界は破滅への道を歩みはじめてしいました。浮き彫りになった人間の闇と、数々の愚行を目の当たりにした明は「人間は本当に守る価値があるのか」と悩みはじめてしまいます。

しかし、人間に守る価値がなくとも、明には大切な美樹がいるのです。美樹さえいるのなら守る価値はあるのだと明は確信し、再び人類を守るべくデーモンと戦う決意を固めたのでした。

明が最後の希望を見出してたどり着いた、牧村家。そこで待っていたのは、殺された美樹の生首でした……。牧村家の人間はすべて殺され、美樹たちを殺した人間たちは、彼女らの首を槍などに突き刺して掲げ、狂乱騒ぎの真っただ中だったのです。 

ついに絶望した明は、牧村家を襲った人間たちを皆殺しにしました。もはや彼には希望も幸福も、生きる意味さえも残されていないのです。しかし、ここで明は決意します。人間を守るためではなく、デーモンをすべて殺し、デビルマンが地球に生き残るために戦うのだと憎悪に燃えます。

そして20年後、地球に残ったデーモンたちを率いる大魔神サタンと、デーモンと合体しながらも人間の心を失わなかった多くのデビルマンたちを率いる明の、一大決戦がくり広げられることになったのです。

地は崩壊し、空は荒れ、世界が亡びるような戦いの末に勝ったのは……?

わずか「5巻」に収め切られており、無駄がなくテンポがいいので、すぐに読めてしまうでしょう。
映画版(cry babyの方ですよ!実写版はクソ映画殿堂入り第1位と名高いです。)を見た方も、コミック版を読み返すことで、色々と納得できる部分があるかと思います。

デビュー作の「ハレンチ学園」からのコレだもんなあ、、、超おすすめ。

2.「やったねたえちゃん!」著者:カワディMAX

「やったねたえちゃん!」で有名な作品…

始まりはたえちゃんが母親に児童相談所へ預けられるところ。
母が遠くに行くのを嫌がる娘に対し、母はくまのぬいぐるみをたえちゃんに渡した。
たえちゃんが名前を聞くと「コロちゃん」と答え、母は施設を後にする。
「必ず帰ってきてね」という願いもむなしく、母は二度と迎えに来ることはなかった。

時は経ち、たえちゃんと友達が遊んでいるところ、友達の母が迎えにくる。

この光景を見て、たえちゃんは顔も覚えてない母の事が恋しくなっていた。
そんな時、ぬいぐるみである筈のコロちゃんが話しかけてきて、たえちゃんを励ます。
それを聞いたたえちゃんもだんだん元気が出て、コロちゃんがいればどんなことも寂しくなくなっていった。

さらに時が過ぎ、たえちゃんが中学生の時に朗報がきた。
なんと、母の兄の伯父がたえちゃんを引き取ってくれるとの事だ。
たえちゃんはコロちゃんと一緒に大いに喜んだ。

ちなみに有名な台詞の、
たえちゃん「家族が増えるよ!!」
コロちゃん「やったねたえちゃん!」
はこの時のもの。

伯父の家に着くと、酒を飲んだ不潔な伯父がたえちゃん達を迎え入れた……
ところがなんと、その伯父は極悪非道な殺人レイプ魔だったのです――。

(現在は復刻版が2020/5/23に販売開始されています。)

3.「アシュラ」著:ジョージ秋山

平安時代末期、飢饉によって屍が累々と横たわり、ある者達は人を殺して人肉を貪り食らっていた。

その一人である妊娠した狂女は、やがて赤ん坊を産み落とす。

狂女は「アシュラ」と名付けたその子をかわいがるが、やがて空腹に耐えかね焼いて食おうとする。

その時、落雷によってアシュラは川に押し流され、岸に辿り着くも誰にも育てられないまま獣同然に生き抜く。

ある時、人狩りに捕まり連れていかれた先で人間としての生活、仲間、愛情を知るが、生みの親と出会ったことで凄惨な出生の秘密、自分が決して家族との生活を過ごせないことを知り苦悩する。

そして、その地に見切りをつけたアシュラは、自分を慕う孤児達を引き連れ都を目指す、、、

作品テーマは終始「生まれてこない方がよかったのに」という言葉に凝縮されています。

4.「四丁目の夕日」著:山野 一

主人公の別所たけしは都内の進学校に通う高校三年生。印刷業を営むやや貧しい実家で、両親や弟妹と共に平凡に暮らしていました。成績は大変優秀で、恭子という恋人もおり、それなりに順風満帆な人生を送っていましたが、受験勉強でピリピリしていたたけしが、喫茶店で「二人で思い出をつくりたい」と切り出した恭子の願いを無下にしてしまい、別れを告げられたところから物語は動き出します。

たけしは飛び出していった恭子を追う際に暴走族ともめごとを起こし、囲まれてボコボコにされてしまいます。大企業の跡取り息子である友人・立花にお金の力で助けられなんとか家に帰り着きましたが、そこではさらに衝撃的な事件が待ち構えていました。母親がごみの焼却中にスプレー缶を爆発させ、全身に大けがを負ってしまったのです。莫大な治療費を工面せねばならず、別所家は経済的に苦しい状況へと陥ります。

それでも「どうしても子どもにはいい学校へ行ってほしい」という父の思いを受け、家族の協力のもとたけしは改めて大学受験を決意します。たけしをいい大学に行かせることを強く夢見ていた父も、さまざまな費用を捻出するため印刷所の仕事にますます精を出すのですが……それが新たな悲劇を生んでしまうのでした。

父が経営する印刷所はもともとかつかつの運営でした。そこに母の治療費、たけしのための学費、家族の生活費などのさまざまな金銭問題がのしかかります。足りないお金をなんとかしてまかなうため、父は仕事量を以前の三倍に増やし、朝な夕な身を粉にして印刷の仕事に勤しんでいました。しかしある日、過労がたたってふらついた拍子に輪転機に体を巻き込まれ、「全身をぐちゃぐちゃに切り刻まれる」という凄惨な死を迎えてしまいます。

そのうえ葬式中にサラ金業者が取り立てにやってきて、父が経営の為に多額の借金を背負っていたことが発覚。たけしは受験を諦め、実家の印刷業を継ぐことを決意します。しかし、以前たけしともめた暴走族の圧力もあって仕事がなくなった印刷所はあえなく倒産。たけしは退学して弟妹と共にボロアパートへ引っ越し、二人を養うために鉄工所の工員として働きはじめました。

そうして、たけしの精神が追い詰められていく様を描いたのがこの作品です。
見方によっては「救いがある」とする意見も少なからずありますが、、、判断はご自身でお願いします。

5.「ぼくらの」著:鬼頭 莫宏

夏休みに自然学校に参加した少年少女15人は、海岸沿いの洞窟でココペリと名乗る謎の男に出会う。子供たちは「自分の作ったゲームをしないか」とココペリに誘われる(ザ・ムーンっぽいよね)。

ゲームの内容は、「子供たちが無敵の巨大ロボットを操縦し、地球を襲う巨大な敵を倒して地球を守る」というもの。

兄のウシロに止められたカナを除く14人は、ただのコンピュータゲームだと思い、ココペリと契約を結ぶ。その晩、黒い巨大なロボットと敵が出現する。ロボットの中のコックピットに転送された子供たち15人の前には、ココペリと、コエムシと名乗る口の悪いマスコットが待っていた。これが黒いロボット・ジアースの最初の戦いであった。

戦闘を重ねるにつれ、子供たちはゲームの真の意味を目の当たりにすることになる。
ロボットの動力源は子どもたちの命であり、「ゲームに勝ってもパイロットとなった子どもは死亡(相手のロボットに登場している【同様の事情を背負った子ども】も当然死亡する)」「ゲームに負ければ自分の住む星が滅亡」という宇宙を舞台とした星取合戦に巻き込まれてしまった子どもたちの物語。

6.「最終兵器彼女」著:高橋 しん

北海道のある街(小樽市がモデル)で暮らすシュウジとちせ。

ちせは以前から好意を抱いていたシュウジに告白、そのぎこちない交際は交換日記から始まり、二人は静かに愛を深めていく。

しかし、ある日、謎の「敵」に街が空襲される。戦火から逃げるシュウジが見たのは、腕を巨大な武器に変え、背から鋼鉄の羽根を生やし「最終兵器」と化して敵と戦うちせの姿であった。

戦争が激化していくにつれ、ちせは力が暴走していき、肉体も精神も人間とはほど遠いものとなっていく。

一方、シュウジの周りでは親友や女友人、先輩たちが次々に戦禍で故人となっていく。

壊れていく世界。壊れていく愛。

ほのぼのとした日常は突然終わりを告げ、シュウジはちせを連れて街を出ます。

受け入れられないシュウジと人間の心を残しながら殺戮を繰り返すちせ。

少しずつ兵器にむしばまれていくちせの葛藤、変わらない二人の絆、それゆえに展開は鬱となり、心をえぐるような展開を見せる鬱漫画となっています。

ちなみに本作のキャッチコピーは「この星で一番最後のラブストーリー」

7.「スパイダーマン」著:池上 遼一

高校生・小森ユウは勉強の虫と揶揄される科学オタクで、受験や試験に備え、学校の理科室に夜遅くまで居残っては実験の真似事をしていた。

ある夜、ユウは放射能実験装置をいじくり回していたところ、偶然放射能を浴びた蜘蛛に噛まれてしまう。その瞬間、彼は人間離れした体力と壁に蜘蛛のように貼りつく能力を得る。

その後、自作でコスチュームとスパイダーハンド(ウェブ・シューター)を作り、スパイダーマンとしてのアイデンティティを得たユウは、片思いの少女を助けるべく犯罪者に立ち向かったのをきっかけに、次々と現れる超能力者達との戦いに飲み込まれていく。

この大いなる力を、いったい何の、誰のために使えば良いのか? いつかは自分も、彼らのようになってしまうのではないか? ユウは苦悩しながら、さまよい続ける……。

ちなみに、いわゆる「スパイダーマン」的な要素は序盤(コミック版1巻、文庫版1・2巻)にしか存在しない。

そこから先はひたすら小森ユウのスパイダーマン(後にスパイダーマンであることすら放棄するのだが)としての苦悩と現実社会の食い物にされた人々の陰鬱なエピソードが描かれる。

これでもかと陰鬱なストーリーが展開し、ラストに至っては、ハードな内容となっている。

8.「洗礼」著:楳図かずお

美貌を誇った往年の大女優・若草いずみは、子役時代からの厚化粧や撮影所の強いライトの影響などにより、やがて顔に深いしわや醜いあざが出来てしまう。幼い頃から人一倍「美醜」や「老い」といったものに敏感だったいずみは、そのあざのせいで精神の安定を欠くようになり、ついには、若さと美貌をとりもどすため、主治医の村上によるアドバイス、「女児を出産し、その娘に自身の脳を移植をする」という計画を企てる。

いずみは、無事出産した娘をさくらと名づけ、彼女の頭が十分大きくなるまで大事に育てあげた。周囲からは良き母・娘と見られ、さくらが書いた作文「わたしのやさしいおかあさん」は文部大臣賞を受賞するほどのものであった。

一見良好な母・娘関係の裏で、いずみの主治医は、家の2階で、来るべき脳移植手術にそなえ、動物実験を繰り返していた。さくらは不気味なものを感じ取ったのか、決して2階に行くことはなかった。ある日、さくらが思い切って2階に上がってみると、動物実験の痕跡である大量の死骸と、2台のベッドを発見。母親の真の意図に気づいて逃げ出そうとするが捕まってしまい、おぞましい脳移植手術は強行される。

生まれ変わったいずみ(さくら)は、普通の女としての幸せを手に入れると称して、担任である男性教師・谷川の愛をつかみ取ろうと決意。これまでのさくらのボーイフレンド(同級生)には、子供なんてもう相手にしない、自分が欲しいのは大人の愛だと言い放つ。しかし、独身だと思っていた谷川に実は妻子がいることが発覚。そこで、いずみは策を講じて谷川の家にうまく乗り込むと、谷川の妻を陰湿の限りを尽くしていじめぬき、谷川を小学生の体で不気味に色っぽく誘惑する。

いったんは、妻を病院送りにして谷川から離婚の約束をとりつけ、目的を達したかに思ったいずみ。だが、勝ち誇るのもつかの間、実は谷川夫妻そろっての芝居にだまされており、妻は実家に避難し、谷川は密かにさくら(いずみ)に病院でカウンセリングを受けさせようとしていたことを知って涙を落とす。

おりしも、手術前のいずみの顔にあったのと同じ、加齢や過度の化粧による醜いあざが、小学生であるさくら(いずみ)の顔にも出現。さらには、若草いずみの引退後を追跡調査するルポライターも現れ、いずみは徐々に追い詰められていく。いずみは最終手段として、さくらの親友である良子に全てを打ち明け、谷川の妻である和代への脳の再移植を強行しようとするのだが…。

9.「鉄腕アトム」著:手塚治虫

21世紀の未来を舞台に、10万馬力のロボット少年・アトムが活躍するSFヒーローマンガです。

2003年4月7日、科学省長官・天馬博士は、交通事故で死んだひとり息子・飛雄(とびお)にそっくりのロボットを、科学省の総力を結集して作りあげました。

天馬博士はそのロボットを息子のように愛しましたが、やがて成長しないことに腹を立て、そのロボットをロボットサーカスに売り飛ばしてしまいます。

サーカスでアトムと名づけられたロボットは、そこで働かされていましたが、新しく科学省長官になったお茶の水博士の努力で、ロボットにも人権が認められるようになり、アトムはようやく自由の身となりました。

アトムは、お茶の水博士によってつくられたロボットの両親といっしょに郊外の家で暮らし、お茶の水小学校へ通うことになります。

けれどもひとたび事件が起これば、アトムはその10万馬力のパワーで、敢然と悪に立ち向かっていくのですが。。。

アニメ版とは異なるエンディングであり、手塚治虫の本来表現したかった結末となっているので、是非コミック版を読むことをおすすめしたい作品です。

10.「四谷怪談!」著:玉川ユキ

東府高校に通う八ツ墓ケイタは幼なじみで同じクラスの四谷マナミに長年片思いしていた。昔は仲がよかったがいつ頃か疎遠になっており、四谷は1年先輩の鍋島シューヤに憧れていた。

そんなある日、八ツ墓は友人の累ヶ淵キッカの占いで「必ずフラれるが今週中に四谷に告白しないと死ぬ」といわれる。

それから暫くして四谷が行方不明になったという話を聞いた八ツ墓は四谷を探そうとする。

「オカルト✕ラブコメ!?八ツ墓の恋の行方は?」 …なんて説明がされていますが、

後半は完全にオカルト×ラブコメの皮を被った、依存と執着と破綻の物語となっています。

こちらは「GANMA!」で無料で読める他(公式サイトリンク)、クラウドファンディングにて書籍化もされていますが受付終了しており、現在はKindle版が配信されています。

11.「なるたる」著:鬼頭莫宏

小学6年生の玉依シイナは小学校最後の夏休みに祖父母の住む島に行き、海で溺れかけたところを星の形をした変わった生き物『ホシ丸』に助けられる。

ホシ丸は少年少女の意識とリンクし、変幻自在の能力を発揮する「竜の子」の一体であった。

他の「竜の子」の持ち主(リンク者)との出会いのエピソードを挟みながら、シイナは「竜の子」を用いて世界をリセットしようとするリンク者たちの戦いに巻き込まれていく。

リンク者たちの中心人物である直角と鶴丸はそれぞれ世界の破壊と存続をかけて戦っており、その戦いのキーパーソンが地球そのものを形作る二匹の龍とリンクする涅とシイナであることが判明する。

シイナは世界の存続のために戦ったにも関わらずあらゆる人から世界を混乱に陥れた元凶として攻撃されすべての肉親と友人を殺される。

世界に絶望したシイナを見て涅は世界を破壊するが、シイナと涅はそれぞれ子供を身篭ってたため、涅の息子とシイナの娘による世界の再創造が始まる…。

タイトルは「骸なる星 珠たる子(むくろなるほし たまたるこ)」の意味。

キャッチコピーは「未来に贈るメルヘン」、アニメ化に際しては「夢はでっかく地球サイズ」というものであった。

本作では、残酷な描写が多く見られるが、これは意識的ではなく、病んでいた当時の作者の精神状態が反映されたのかもしれないと語っている。ただし、ラストの展開に関して作者はハッピーエンドであるとの認識を連載終了後のインタビューで語っている。

ちなみに、何も知らずに読んだ方の中には、あまりに残酷なシーンの数々にトラウマを発症した方も多いはず。(被害者の心理描写があまりにリアルすぎて…)

特に「ミミズジュース」「試験官」「豚食い」「のり夫」というキーワードは、なるたる読者の方になら分かってもらえるトラウマシーンです。

あまりの残酷描写に「トラウマ漫画といえば絶対なるたる」という方も少なくないハズ。

12.「バジリスク 〜甲賀忍法帖〜」著:せがわまさゆき 原作:山田風太郎

「竹千代と国千代、どちらを跡継ぎにすればいいのか決められない」という徳川将軍は、忍法の二大宗家である伊賀と甲賀から各10人ずつ代表者を選定し、10対10の殺し合いをさせることしました。伊賀が勝てば竹千代、甲賀が勝てば国千代を後継ぎにするというものです。

主人公の弦之介(げんのすけ)は甲賀の頭領。ヒロインの朧(おぼろ)とは共に生きることを誓いあった恋人同士ですが、弦之介は甲賀側、朧は伊賀側の代表忍者であるため、皮肉にも殺しあう運命にありました。

激しい戦いの末に1人、また1人と命を落としていく伊賀と甲賀の忍者達。1人死ぬごとに人別帖という巻物に書かれた忍者の名前を消していきます。実力者であった弦之介と朧は互いに最後まで生き残り、ついに2人は対峙することになりました。

朧のことを愛しながらも、甲賀の頭領として彼女を討つことに決めた弦之介は、剣を取るように朧に言います。しかし、朧には弦之介と戦う意思はなく「自らを殺して欲しい」と申し出ます。そんな朧の姿に戦意を喪失する弦之介。

そして、弦之介の気持ちを悟った朧はゆっくりと近づき 「大好きです」 と言い残し、短刀を自らの胸に押し当て自害をします。満面の笑みを浮かべながら。

最愛の人を目の前で失った弦之介は、人別帖に最後まで残された自らと朧の名前を消すと、「さいごにこれをかきたるは伊賀の忍者 朧なり」と書き足しました。

ラストシーンでは朧の亡骸を抱きしめながら、川へと入った弦之介が生涯最後の刃を自らに向けます。仲睦まじい2人の亡骸が寄り添いながら、ゆっくりと川を流れていき物語は幕を閉じます。

原作はもちろん読みごたえがありますが、読みやすさの点でコミック版がおすすめです。

13.「ザ・ムーン」著:ジョージ秋山

大富豪の魔魔男爵は、悪がはびこる世界を平和に導くために、新たな神としてザ・ムーンという巨大ロボットを作りました。ザ・ムーンは純粋な心を持った少年少女たち9人が心を合わせることによって動く設定で、彼らはザ・ムーンを操縦することであらゆる悪と立ち向かいます。

日本に水爆を落とそうとする連合正義軍と戦ったり、ダムの決壊を止めたり、鉄人間を使って人々を襲う伯爵と戦ったり。ザ・ムーンと9人の少年少女達は正義の名の下に勝利します。

わりとよくある設定のロボット活劇だと思うのですが、問題なのは最終回です。

ある日UFOが現れ、見た目が犬の宇宙人「ケンネル星人」が地球にやってきます。ケンネル星人の目的は地球と友好関係を築くことだったのですが、一部の人間がケンネル星人の科学力を利用して地球を支配することを企みます。

その企みの最中でケンネル星人の探偵隊員を殺してしまったために、ケンネル星人が激怒。最終兵器であるカビ発生装置を地球に送り込み、1年以内に人類を滅亡させ、地球を滅ぼすことにしました。

カビは凄まじい繁殖力をもっていて、カビに汚染された人間は死にます。ザ・ムーンと少年少女達はカビ発生装置を破壊するために立ち向かいますが、たどり着く前に1人、また1人とカビの脅威にさらされて倒れてしまいます。

そもそも9人いないとザ・ムーンは動かないので、1人死んだ時点でゲームオーバーだと思うのですが、少年少女達は最後まで諦めずにカビ発生装置に立ち向かいます。

最終的にカビ発生装置の元へたどり着くことなく、最後の1人がカビに冒され倒れたところで、ストーリーは終わります。

「銭ゲバ」といい、「アシュラ」といい、秋山ジョージ作品は、本当に人間の本性を描こうとする漫画が多く、読後に心を握りつぶされたような衝撃が残る作品ばかりですね。

おすすめ。

14.「魔法騎士レイアース」著:CLAMP

謎の世界であるセフィーロに突如として引きずり込まれた3人の女子中学生が主人公のファンタジー冒険マンガ『魔法騎士レイアース』(CLAMP/講談社)。彼女達はセフィーロの平和と秩序を支えるエメロード姫によって召喚されました。

エメロード姫に「神官ザガートによって幽閉されている。この世界を救ってほしい」とお願いされた物分かりの良い主人公達は、めちゃくちゃ頑張ります。

最終的にザガートを倒し、エメロード姫が幽閉されている城に向かう主人公達。これでめでたくハッピーエンド、元の世界に戻れると誰もが思った次の瞬間、 「私の愛するザガートを殺したのはあなたたちね……! 許さない!!」 と、怒り狂ったエメロード姫が強大な魔神の力をもって襲いかかってきます。

実は、エメロード姫はセフィーロを安定させるために存在する柱でした。ところが、エメロード姫はザガートを愛してしまったことによってセフィーロの安定よりもザガートの幸せのみを祈るようになってしまったのです。これによりセフィーロの崩壊を恐れたエメロード姫は「自らを殺してもらうために魔法騎士を召喚した」という真実が明かされます。

自分たちが召喚された本当の理由を知った主人公達は大きく動揺します。それでもエメロード姫の願いを叶えるために、なんとか力を集結させて撃破に成功し、元の世界に戻るのですが。。。

15.「魔物語」著:松本洋子

あの有名な少女向け雑誌「なかよし」で連載された短編集「魔物語」、第一話「にんじん大好き!」を紹介しておきます。

主人公のたかしはにんじんが苦手で食べられません。お母さんには怒られるし、どうしたらにんじんが食べられるようになるのか悩んだ末、たかしは神様に「にんじんが食べられますように」とお願いをします。

すると不思議なことに、たかしはあらゆる食べ物がにんじんに見えるようになります。お母さんが作ったハンバーグもにんじんにしか見えません。しかし、食べてみるとハンバーグの味がして美味しいので、にんじんが好きになりました。

いつの間にか、本物のにんじんも食べられるようになり、お母さんにも褒められてご機嫌なたかし。すると今度は食べ物だけではなく、あらゆるものがにんじんに見えるようになりました。まさにファンタジー!な展開で、ここまでは少女漫画としても成立している気もしますが。。。

ある朝、主人公が目を覚ますと目の前に大きなにんじんがありました。 

「かぷっ」と一口かじると、とても美味しい。

「はじめてだこんなの」「こんなおいしいものがあったんだ!」

お腹がいっぱいになった主人公が台所に向かうと、にんじんが新聞を読んでいました。にんじんの正体はお父さんでした。

「おはよう たかし」 「どうした? ママは?」

次のカットで、内臓をブチ撒けて絶命しているお母さんの惨殺死体が描写され、END。

少女漫画らしく可愛らしい絵柄でありながら、話の内容は凄惨そのもの。多くの少女にトラウマを与えた作品です。

16.「空が灰色だから」著:阿部共実

著者の阿部共実さんは、2010年の商業誌デビュー後、2014年の『ちーちゃんはちょっと足りない』が「このマンガがすごい!2015」(宝島社)オンナ編第1位、第18回文化庁メディア芸術祭 マンガ部門 新人賞を受賞。他に『死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々』『ブラックギャラクシー6』などがある。

そのなかでイチオシしたいのが本作品です。

思春期の10~20代の女子が主人公の、奇妙な物語の短編集。

各話ごとに1人の人物に焦点を当てて浮き彫りにしていくことでキャラクターを表現していく。

青春・ギャグ・ホラー・スッキリする話まで取り扱うテーマは多岐にわたるが、そのどれもが「心を抉(えぐ)る」話になっていることが多く、随所にちりばめられた日常や青春の風景が、一層読者の心情をひきつけることに成功している。

青春時代に感じる、得体のしれない葛藤・モヤモヤした部分を煮詰めて凝縮したようなストーリーが続き、鬱展開となることが大半なので、その心を突き刺すような心理描写が延々と脳髄を叩き潰しにかかってくる。

ただ好きな人の気を引きたい主人公や、自分の感情に戸惑う主人公が日常を過ごすストーリーだが、自意識過剰であったり、思い込みの激しさ等、人間の痛々しい心理を反映させた物語。

心をかきみだし、またどこかにひどく儚い、人間のもつ生理的嫌悪感を刺激する作品群に仕上がっている。

  1. 「こわいものみたさ」
  2. 「黒」
  3. 「ガガスバンダス」
  4. 「ただひとりでも仲間が欲しい」
  5. 「少女の異常な普通」
  6. 「歩み」
  7. 「お兄ちゃんが」
  8. 「今日も私はこうしていつもつまらなそうな顔をしている」
  9. 「最高のプレゼント」
  10. 「名乗る名もない」

などのエピソードは、思春期真っ只中の方々に、特におすすめしたい。

17.「ちーちゃんはちょっと足りない」著:阿部共実

「このマンガがすごい!2015」(宝島社)オンナ編第1位、第18回文化庁メディア芸術祭 マンガ部門 新人賞、受賞作品。

中2女子の「ちーちゃん」と「ナツ」を中心とした日常を描いた作品。

何かが「足りない」毎日を送る二人が、なにもない「平凡」に圧迫されながら過ごす青春を描く。

そこにある、クラスカーストの存在や発達障害を疑わせるような表現、経済的貧困にあることや、それらの描写のリアルさが最大の鬱要素となっている。

いわゆる鬱漫画にありがちな「死・暴力・いじめ・災害・明確な悪意」などの要素がほとんど無いにもかかわらず、終始「モヤモヤ」とした感情がまとわりつき、読了後にも脳に霞がかかったような閉塞感が垂れ込める恐ろしい(すばらしい)作品に仕上がっている。

心をざわつかせたい、そんなあなたにおすすめ。

18.「ヒミズ」著:古谷 実

「行け!稲中卓球部」を始めとするギャグ路線の漫画で有名な古谷実さんが「笑いの時代は終わりました…。これより、不道徳の時間を始めます」という宣言の後に発表したのが本作品。

中学生にして貸しボート屋を営む住田祐一は、不遇な現実を諦観しつつも、平凡な生活を送ることを夢見ていた。

ところがある日、かつて蒸発するも戻って来た父親がらみで暴力団から暴行を受ける。

しかも母親が中年男と駆け落ちして失踪したことを機に孤立無援となった挙句、それに耐え兼ね父親を衝動的に殺害するという取り返しのつかない事態に陥り、天涯孤独の身となる。

住田は普通の人生を送ることを諦め、「悪い奴」を殺すべく、夜の街を徘徊するようになる。

茶沢景子は住田が天涯孤独になる以前から気にかけており、彼が殺人行動を起こしたことを知ってもなお救い出そうとする。しかし、茶沢の想いとは裏腹に、住田の人生は深い絶望に落ちていった。

不道徳がはびこる漫画の中で、普通を大切にしてきた主人公が、普通からかけ離れてしまうという展開で、ただただかわいそうな主人公が抗い続けます。

それはそれは、いわゆる「バッドEND」な作品。

19.「僕はラブソングが歌えない」著:高井唯人

ラノベの主人公VSエロゲーの主人公…、青春残酷NTRエレジー!! 鈴木くんは高校生。天真爛漫な幼馴染「みきちゃん」、生真面目で引っ込み思案な委員長「川上さん」、男勝りなゲーム友達「さくらちゃん」…、3人のかわいい同級生と平和でヌル~い学園生活を送っていました。ところが「ハーレムを作りたい」と宣言する佐藤くんが転校してきてから、なんだか雲行きがあやしい感じで……。

作品紹介より引用

なんていう作品だけど、一般に言われるNTR(寝取られ)作品とは一線を画す。

すごく簡潔に紹介すると、「休み時間に少し話しただけで顔を赤らめちゃう程ウブな娘」や、「プリクラを可愛く撮れてるって言われただけで好きになっちゃうほど純粋な娘」たちが、イケメンと出会って、たった数日で裸にされちゃうお話。

NTR(寝取られ)作品って言うと、自分の彼女や妻が他の男と性的関係になって、その状況を見て興奮する主人公が想像されると思われそうだけど、本作品ではそんなこと全くなし。

主人公は「イケメン」に、幼馴染を含む仲の良かった女友達がセフレにされていく状況に、ただただ絶望していく。

主人公は、なすすべのないままに、エンディング(全員NTRでの7P)を迎える。おしまい。

BADエンド(鬱エンド)作品が読みたい、という方におすすめ。コミック版に加え、Kindledeで上下巻セットが発売中。

20.「先生の白い嘘」著:鳥飼 茜

主人公である美鈴は24歳の高校教師。

自分を見下してくる「親友」の美奈子の婚約者である早藤に襲われた過去があり、現在も関係を強要されている。

美鈴の生徒である新妻はバイト先の人妻から強引に関係を迫られていた。新妻が自分と同様に意思とは無関係に他人に身体を奪われているという事を面談で知る美鈴。

美鈴は男と女の不平等さへの不満をまっすぐ新妻にぶつける。新妻はそれを聞き美鈴を強く意識していくようになる。

美鈴は下半身の画像をダシに早藤に脅され関係を続けさせられていた。早藤は他にも合コンで玲菜を摘み食いし心酔させていた。美奈子は早藤が浮気をしているという事に勘付いているが、気付かない振りをしている。

新妻は親身になっている風を装って近付いてきた学校一の美女・三郷佳奈(通称ミサカナ)に美鈴との事を色々話してしまう。

ミサカナに吹き込まれ新妻は美鈴を救いたいと家に押しかける。恐怖した美鈴は新妻を拒絶する。

玲菜が働く歯科医に美奈子が訪れ、玲菜は美奈子が早藤の婚約者だと気付く。美奈子さえいなければ自分と早藤は上手くいくと考える玲菜。

美奈子が妊娠し、時間が経つにつれ早藤は精神が不安定になっていく。 美鈴は新妻からの誠意ある告白を受け入れ、距離が近付く。しかし美鈴が好きなはずなのにキスをしても下半身が反応しない事に戸惑う新妻は……?

っていう、友だちの彼氏に性的暴力を受けながら、教え子の男子高校生と恋してしまうっていうお話。

男女格差・性・暴力(レイプ)など、かなり踏み込んで性に関する問題を扱った作品なので、生半可な気持ちでは読めない作品。

21.「血の轍」著:押見 修造

毒親を題材にしたサイコサスペンスで、2018年の「このマンガがすごい!」にもランクインした話題作。

主人公・長部静一は群馬県に住む中学2年生。おとなしめの性格ですが、クラスには友達がいて、日々を平和に過ごしています。

家では、サラリーマンの父・一郎と専業主婦の母・静子との3人暮らし。静子は若くて美しく、息子を溺愛しています。

プロローグとして、静一が見ていた夢が最初に描かれます。幼い頃、母に手を引かれて散歩していた静一は、道に倒れている猫を見つけます。

「どうしてしんじゃってるん?」

と静子に尋ねる静一。静子はそれに答えず、静一に微笑むのでした。

そのときの微笑みが、いきなり見開きの大ゴマに(上記画像参照)。何気ない親子のやり取りではありますが、ものすごく不穏な何かをかかえて、物語はスタートします。

夏休みになり、仲良しの従兄弟・しげると家族総出で山に出かけた静一。そこで最初の大きな出来事が起こります。それによって、平和だった静一の日々は一変することに。今まで意識していなかった静子とのいびつな親子関係が、露わになっていきます。

ちなみに、プロローグで描かれた死んだ猫のエピソードを、静一が静子に話して聞かせるシーンが登場するページのノンブル(印刷物のページごとに欄外に打った、順序をあらわす数字)部分に、血痕があります。

この血痕は、この後、何度も、普通の会話をしているページに出てきます。しかし、これがいったい何を意味しているのか、本作品中で明かされることはありません。

登場人物の心の中に潜む闇とか暴力性の象徴なのか、悲劇を予告した刻印なのか。

母と子の断ち切れない呪縛の禍々しさと、絵画的な描写の美しさの対比が、より一層本作品をホラー作品として際立たせています。

何より「これ、実際に取材して描いてる実話じゃないのか」と思わせるほどのリアルさが伝わってくる、っていうのが、一番怖いところなんですけどね。。。

22.「ミスミソウ」著:押切 蓮介

舞台は廃校寸前の大津馬中学校。主人公は、その中学へ東京から転校してきた女の子・野咲春花。

閉鎖的な田舎社会だったせいで、野咲春鼻はイジメの標的にされてしまうという物語。

ひたすらにイジメ描写がエグく、イジメの範疇を超えている。

イジメの内容の一例を挙げると、、、イジメは学校内だけでは収まらず、野咲春花の家族にも標的が向かい、その結果、野咲春花の家が燃やされてしまう、なんていうレベル。

家族が負った被害のショッキングな描写もさることながら、復讐に走った野咲春花を中心に巻き起こる全ての事象が、これもことごとく陰惨。

唯一信頼できると信じていた人物の裏切りや、イジメに加担していた女教師のラストも、つくづく救われない。

終始絶望。

鬱漫画にランキング付けるとしたら、本作品を1位に挙げる人もいるだろうと思えるほどに救われない作品。

23.「漂流教室」著:楳図かずお

担当編集者より、「のっけからドーンと盛り上がるものにしてほしい」という要望に快諾した作者が公害をテーマに盛り込んだ鬱展開の本作品。

離れ離れになり、時空すら違う空間にいる子供を想う母の強い愛を描いており、また、公害も当時の問題となっていたため、大きく話題となった鬱漫画です。

(ちなみに、この母子の行き違いが心に響く悲しい展開となります。漫画としては面白いのですが、重く、暗く、悲しい展開は、楳図かずお作品ならではの「重さ」があります。)

主人公の少年は母親と喧嘩をしたまま学校に行きますが、そこで大きな地震に襲われます。

気が付くと外は岩と砂漠だけの荒廃した大地が広がっていました。

文明の崩壊でほろんだ未来の世界と知った子供たちが協力して、小学校を拠点とした国を築く決意をします。

しかし、飢餓や未知の現象に恐怖することで、狂気や内部対立、現代にはないような伝染病といった脅威にさらされていき、児童たちの数は日に日に減ってしまいます。

もしかしたら自分の身にも実際に起こるのではないかと思わせるような漫画であるため、読むごとに世界観に引き込まれていく作品であり、荒廃した世界の描き方や、人間模様は、現実にも起こりうるようなリアリティーあふれる仕上がりとなっています。

多くの読者が涙し、引き込まれた悲しいストーリーと母子の深い愛が描かれた、おすすめの作品です。

ラストは、バッドENDとも受け取れますよね。。。

どこかで想像の世界の破滅だったものが、想像ではなくて、もっと現実になってしまう。やはり未来は暗いのかもしれないと考え込んでしまう。そうしたことを現実として捉えだしたのが、「漂流教室」なんですね。すぐそこに破滅があるかもしれないという危機感がありましたよね。

「漂流教室」制作秘話インタビューでの楳図かずお氏の発言内容より引用

24.「おやすみプンプン」著:浅尾いお

一見落書きのように描かれた主人公ですが、実際は普通の人間です。

様々な困難が主人公のプンプンに降りかかり、それによって成長し、衝撃の鬱展開へと導く物語。

鬱漫画として有名な作品で、落書きのような主人公の見えざる苦しみがダイレクトに伝わる描写が特徴的です。

また、独特なキャラクターが多数登場しますが、それらの登場人物はそれぞれ鬱ストーリーをもっており(特にプンプンを取り巻く家庭環境が壮絶)、世界観に引き込まれる作品となっています。

ある日、見知らぬ親子が宗教の勧誘にプンプンの家を訪れます。

プンプンの叔父は激しく口論となります。プンプンが様子を見に行くと、そこにいたのは一目ぼれの相手である田中愛子でした。

愛子は逃げ出し、プンプンはそれを追いかけます。二人で逃げようと誓い合いますが、プンプンはいけませんでした。

リアルな人間関係を描き、それぞれが持つ心の葛藤を赤裸々に表現されていきます。

登場人物それぞれが多くの出来事と葛藤していき、堕ちていき、苦しんでいくというストーリーですが、随所に名言とも呼べるセリフが多数ちりばめられており、考えさせられるような展開をみせる作品となっています。

長編となるため、時間のある時に一気に読み進めていただきたい鬱漫画です。

25.「僕たちがやりました」著:荒木 光

実写化されたことでも有名な作品です。

舞台となるのは、荒れ果てた高校(矢波高校)です。主人公たちには、普段逆らえない不良生徒たちがいます。

そんな高校に不満を持っていた彼らは、「そこそこ楽しく生きる」というモットーをついに捨て、矢波高校の生徒たちに逆襲することを伊佐美や”パイセン”たちと誓い合い、爆弾を設置します。

簡易爆弾でしたが、ガスに引火することで大爆発となります。その火は当然生徒たちにも燃え移り、その結果、不良生徒たちが合計10人も死亡してしまい、彼らの人生は一変します。

初めはとんでもないことをしてしまったという焦りの感情を持つ彼らですが、その彼らの狂い出す人格や人生が鬱展開へとつながっていきます。

罪と罰、償いとはなんなのか、読者にすら考えさせるような展開をストーリー化しており、ちょっとした不平不満が読んだ思わぬ悲劇、逃げ出すにも逃げ出せず、変わりゆく心情の変化を巧みに描いています。

思春期ならではの生々しい感情が入り混じった登場人物たちのやり取りは、読み手側をひきつける人間の暗い底の部分を描いていて、最後まで一気に読み進めてしまうような作品となっています。

ちなみに、本作品に登場する人物たちは基本的にクズしかいません。

例えば、主人公のトビオは、伊佐美の元カノで初体験を済ませたり、美人の看護師さんを自分から口説いておいて最後はこっぴどく振ってみたり、瀕死に追いやった不良の一人である市橋に良心の呵責から、何とか許してもらおうと接近したものの、市橋の唯一の心の支えとなっていた蓮子について「お前と蓮子応援するわ」と言いながら、結局トビオは「俺たち付き合った」と宣言し、それが引き金となって市橋が自殺に追いやられたりします。

そんなクズな主人公の周りの人物も、本当にクズしか登場しませんが、本作品に出てくるクズたちの行動は、どれも「軽い気持ちで」「ノリで」やってしまいました、と受け取られる部分が多く存在することから、ここが漫画としての好みの分かれるところかと思います。

そんなクズたちですが、最終的には全員で自首することを選択します。

パイセンが今まで貯め込んだ一億2000万円を使って、盛大な自首を実際に決行し、動画配信サイトも利用して自分たちが真犯人であると高らかに「僕たちがやりました宣言」を実行。

そして結末へ、となるわけですが、つづきはぜひご自身で読んで(観て)みてください。
(「オチがつまらん」と、結末について酷評するレビュー多々あり。。。)

「良心の呵責はどうすれば消えるか」、突き詰めると「死は死で償えるのか」というテーマを根底にもつ作品だと捉えて読んでみると、考えさせられる部分のある作品ではあると思います。

26.「ぼくらのへんたい」著:ふみふみこ

女装する少年が4人も登場する漫画で、その中でも性同一性障害に苦しんでいるまりかは中学生の少年です。見た目は少女のようにも見えます。

女装という共通点をもつ彼ら4人が、オフ会で出会うことで物語が動き出します。

中でも性同一性障害の彼は、特に女の子のような見た目をしていて、性同一性障害に苦しみ続けています。

そのためか普段の自分の姿こそが男装であると感じており、女装に理解を示す人やそうでない人など、様々な人間関係を通して悩み、苦しみ、成長していくストーリーです。

一人の少年が女装する理由は、姉が亡くなってしまったことにありました。

精神的に不安定になった母親が彼の存在を認めず、女装していなければ無視されるという展開です。

彼自身精神的に追い詰められていく暗い悲しさや、思春期の子供たちが各々持っている存在価値に焦点を当てている物語展開が話題となった作品です。

本作品は、青春を過ごす彼らの複雑な事情に目が離せない展開となっており、「男女の性差やコンプレックスに関して切実に描かれている傑作」として評価されています。

27.「少女椿」著:丸尾末広

少女椿のストーリーは、現代では子供に見せられないほどのタブーが満載となっている鬱漫画です。

もともと「少女椿」は、生き別れた母親と、失踪した父親を探す少女、両親と再会することで幸せに暮らすというハッピーエンドの紙芝居(作:浪花清雲)です。

しかし、漫画版では、作者ならではの不幸や鬱展開を全面に押し出した構成となっています。
(ちなみに、実写映画化もされています。)

主人公である少女のみどりは、母親と貧しい暮らしをしていましたが、その母親はすでにネズミに内蔵を食い荒らされて亡くなっていました。

孤独となったみどりは見世物小屋「赤猫座」の主人の甘い誘いに乗ってしまい、そこの下働きとして使われてしまいます。

そこにいる人々を化け物呼ばわりしたことで狂気にまみれた異常な日々を過ごすこととなります。

現代ではタブーとなるような行為を平然と少女に対して行う大人たちの姿は地獄の鬼そのものです。

異形だらけの芸人達にいじめられ、毎日つらい思いをしていたある日、ワンダー正光を名乗る手品師の男が雇われます。

瞬く間に売り上げを伸ばした彼に気に入られ、いじめられることもなくなりやっと幸せをつかみ始めたかと思われたみどりですが、やはり不幸な運命からは逃れられません。

仲間を目の前で殺され、貧困から抜け出すチャンスも奪われ、そして最終的にはまた天涯孤独の貧困生活に逆戻りさせられてしまいます。

少女は不幸ばかりの生活を体験しますが、最後は幸せに、、、と思わせてからの、急転直下バッドエンドが衝撃すぎる展開の鬱漫画で、初めて読む人は不快感を覚えるかもしれません。

突然訪れる不幸、何度も繰り返される光景、そして笑いと涙と空白でこの話は幕を閉じます。

それがどういう意味かは何度読んでも確信が得られませんし、人によって解釈も変わって来ると思います。

散々いじめながらも最後は優しく見送った赤猫座の芸人達、希望の光を見せてくれたワンダー正光。

彼らは本当は何を考えていたのか、みどりが見た景色は何なのか、なぜこの景色を見ているのか、誰が見せている景色なのかなど、最後の最後のコマまで「なぜこのコマ、ページが必要だったのか」を考えさせられる作品です。

28.「ザ・ワールド・イズ・マイン」著:新井英樹

The World Is Mine、通称TWIM。

狂気じみた純粋悪を心に持つ謎の男モンと、モンにあこがれた引きこもり男でありながら爆弾魔でもあるトシの二人組(通称トシモン)が無差別にテロを繰り返す物語。

2人はこれといった理由もなく北海道を目指すが、その道中である青森県で、成り行きから連続爆破、警察署襲撃、殺人代行といった日本全土を震撼させる無差別殺戮を開する。

それは内閣総理大臣までも舞台へと引きずり出す大きな勢いとなる一方で、時期を同じくして、突如日本に謎の巨大生物「ヒグマドン」なる生物も出現し、ヒグマドンは大暴れしながら人々をなぎ倒し、東北を南下していく。

それを追うようにして、「鉄人」とも呼ばれる熊撃ちの老人と、新聞記者がそれを追いかける。

そして遂に3つの点が秋田県大館市で遭遇し、ここで初めてヒグマドンの全貌が明かされることとなり、物語はアメリカ大統領すら巻き込む全世界レベルで進行していくこととなる…。

基本的には、「トシモン」と「ヒグマドン」という2つの怪物が、互いに競い合うようにして、日本を中心に世界全体を少しずつめちゃくちゃにしていくという展開です。

暴力描写があまりに激しく、20世紀最凶とまで呼ばれるほど、理不尽に人の命が奪われ続ける鬱展開の漫画ですが、全てのキャラクターに固有のストーリー性があることや、それらのキャラクターの立ち振る舞いの徹底的かつ偏執的な人間臭さなどから、「漫画史に残る傑作」ともいわれています。

トラウマになるほどのシーンが数多く描かれていますが、心に衝撃を与える作品としておすすめの作品です。

「真説 ザ・ワールド・イズ・マイン」は、いわゆる「復刻版」です。続編ではないので、全14巻の単行本を買うか、全5巻の「真説…」を買うかは、価格差もほとんどないので、好みの問題です。

29.「恋の超時空砲」著:駕籠真太郎

『恋の超時空砲』は、美少女を集めた全14編の短編集です。線の細かい絵画的な少女が書かれた表紙絵に、まず目を奪われます。特徴的ではありますが、少し見ただけでも女性の身体を正確に描くデッサン力の高さがうかがえます。

タイトルから察するに、可愛らしい話だろうと安心してはいけません。ページを捲れば自称怪奇漫画家、駕籠真太郎が描くグロテスクかつエロティックな作品世界が広がります。

ブラックユーモアは好きだけど行き過ぎた描写は苦手という方や、人体切断、異食といったグロテスク作品に耐性のない方は要注意。とはいえ、精緻な絵で構成された画面は現実世界からは遠く、完成された作品世界を客観的に楽しむことができます。

駕籠真太郎画集 Panna cotta より引用

本作は、前後左右どこを見ても美少女ばかりが登場します。その最たる作品である『日本一の美少女の町・汚戸目(おとめ)町』は、美少女を生産するというシュールな設定。

破損し、美貌が損なわれた場合、すぐに新品の少女が配達されるという、あくまでも「商品」として扱われる姿がどこか現実的で恐ろしく感じられます。(収録作『日本一の美少女の町』より)

他にも好きな男子が触ったものを収集する少女を描く『あつめもの 触』や、彼氏の浮気を疑った女子大生が、女性の口は付き合っている男性の性器の形に変形する、という言葉を信じ、自分と同じ形をした口を探す『口腔観戦症候群』など、他にはない奇抜さが新しい駕籠ワールドが広がります。

格話のインパクトが大きすぎる本作ですが、恋や冒険、人間的な成長を描くだけが漫画なのではない、ということを教えてくれます。絵画的魅力を持つ、エログロナンセンスな世界は、駕籠真太郎の表現方法のひとつ。切れ味鋭い駕籠ワールド、可愛いだけじゃない美少女だらけの作品世界に価値観がひっくり返るかもしれない、おすすめ作品です。

30.「ありがとう」著:山本直樹

この作品の主役となるのは、鈴木一家。夫婦と、それぞれ高校生と中学生の二人の娘がいます。

物語は、会社の都合で単身赴任になり、愛する家族と離れ離れにならざるを得なかった、父・一郎が、長年の単身赴任を終え、ようやく家族との時間を過ごすことが出来ると、マイホームに帰ってくるところから始まります。

長い間の単身赴任を終えて帰ってくると、幸せな家族の住む家は無法地帯と化し、地獄の様な状態になってしまっています。

地元の不良グループに薬漬けにされ輪姦される長女・昌子、家の中は不良グループに好き放題荒らされ、アルコール中毒の母・さくらはその状況をどうすることもできず、台所に座って酒を飲むだけ。中学生の妹、貴子も不良グループのリーダーの手にかかってしまっている状況…。

一郎は不良グループを家から追い出し、そのうちの一人を人質にとりますが、不良グループのリーダーが地元の警察署長の息子であるため、警察も頼りになりません。

それでも一郎は、なんとか不良たちを退け、家庭の再生を図ろうと奮闘しますが、昌子は精神的なストレスから不登校になり、母はアルコール中毒の上、救いを求めて振興宗教に没頭、比較的しっかりしていると思われた妹の貴子も、不良グループに強姦された上、その時に撮られた写真を学校にばらまかれ、いじめの標的にされます。

もうここまででも十分なほどに無慈悲かつ凄惨な状況ですが、原作では筆舌に尽くしがたいほど生々しく、これらの状況が描かれます。ここまで読んで拒絶反応を起こした方は、絶対に原作を読むことをおすすめしません。

閑話休題、自分が家を空けたことにも原因があると反省する一郎は、不良たちを家から追い出し、アル中の母に代わって、ご飯を作り、娘の誕生日を心を込めてお祝いし、一生懸命娘たちと会話しようとします。

しかし、そんな思いは空回りし、家庭は表面上は平穏を取り返しますが、いったん離れてしまった家族の心までは取り戻せず…

鈴木家は、温かな家族のつながりを取り戻すことができるのか。そもそも家族のつながりとは何か。

そして、表題にもなっている「ありがとう」という言葉は、誰から誰に向けられた言葉なのか。

私たちの人生に欠かすことなく関わってくる「家族」の在り方について、考えさせられる作品です。
(ちなみに、本作は1996年に映画化もされています。)

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