事件・事故

足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件

3歳児をウサギ小屋で虐待死させた鬼畜夫婦。遺体を前に食事。翌日には家族でディズニーランドへ旅行。

ウサギ用の檻の中で空腹と不安に耐えた3歳の次男に、両親はなおも手をかけた。東京都足立区の次男が2年前から行方不明になっていた事件。警視庁捜査1課は、両親の虚偽の説明を見抜き、東京・荒川の捜索で檻などの物証を発見。遺体は見つかっていないが、監禁致死と死体遺棄での立件にこぎつけた。当時、男児を含めて6人の子宝に恵まれた家族の歯車は、どこで狂ったのか。

変遷し続けた供述

 平成26年7月。捜査1課は、東京都足立区の荒川を捜索していた。

 2カ月前に皆川玲空斗(りくと)君(当時3歳)の失踪が発覚。玲空斗君の児童手当などを不正に受給したとして詐欺容疑で逮捕された母親の朋美被告(28)が、「遺体を段ボール箱に入れ、夫と荒川の河川敷に向かった」などと供述したからだ。

 朋美被告と、同容疑で逮捕された父親の忍被告(31)は当初、「遺体は山梨県の河口湖周辺に捨てた」と説明していた。捜査1課は、数回にわたって朋美被告らを河口湖周辺に連れ出し、説明通りの場所を掘り返したが、手がかりは得られなかった。

 捜査関係者によると、朋美被告らが示す位置は毎回、ズレがあった。「記憶がはっきりしない」などと話していたが、別の捜査関係者は「わが子の亡きがらを捨てた場所。慌てていたのかもしれないが、簡単に忘れるわけがないと思った」と打ち明ける。

どちらかがウソをついている-。捜査の重点は、取り調べで供述を引き出すことに置かれ、6月末ごろ、朋美被告が“自白”した。あとに続くように、忍被告も「玲空斗が言うことを聞かないので、おりに入れて生活させていた。死亡の前日の夜も騒いだので、口にタオルをまいたら、翌朝に死んでいた」と、死亡への関与を認めた。

GPSで遺体捜索も発見できず「骨のひとかけらでも…」

 捜査1課は、玲空斗君の体重と同程度の重さのものに衛星利用測位システム(GPS)を付けて荒川に入れ、遺体が流された場所を捜すなどした。

 7月にスコップ、11月にはウサギ用の檻を発見した。だが、遺体は最後まで見つからなかった。捜査関係者は「骨のひとかけらでも見つけてあげたかった」と唇をかむ。

平成27年5月19日、東京地検は監禁致死と死体遺棄の罪で忍被告らを起訴した。供述と物証をもとに組み立てた犯罪事実はこうだ。

 忍被告らは平成24年12月ごろから平成25年3月3日ごろまで間、足立区入谷の自宅で、当時3歳の玲空斗君の口にタオルを巻き、ウサギなどを飼育する小型の檻に監禁。窒息死させ、段ボールに入れて河口湖周辺に搬送したうえ、同4日ごろに遺体を同区の荒川に捨てたとしている。

 彼らは次男が死亡したことを発見すると、「自然が好きだから」という理由で家族みんなで山へ埋めに行き、翌日は何事もなかったかのようにディズニーランドへ遊びに行った。

 捜査関係者によると、忍被告らは河口湖周辺で、荒川の捜索で見つかったスコップで穴を掘ろうとしたが、うまくいかず断念していた。土が固かったためという情報もある。荒川周辺の防犯カメラなどには、河川敷を訪れる忍被告らの姿が映っていたという。

汚物にまみれ、独りぼっち

 檻は50センチ四方程度で、玲空斗君は体育座りの状態で過ごしていたとみられる。パジャマの上着だけを着用し、下はおむつだった。

 おりの扉付近には重しが置かれ、自力では出られないようにされ、死亡の1カ月前の平成25年2月ごろからは、排泄物を少なくする理由で、2~3日に1回しか食事が与えられなかった。

 捜査関係者は「夜になると、別のきょうだいは寝室で眠るが、玲空斗君は居間に独りぼっちだった。汚物にまみれ、想像を絶する劣悪な環境だったに違いない。不安と寂しさを思うと、本当にやりきれない」と憤りをあらわにする。

生活に困窮、人形で生きているように偽装工作も

 捜査関係者らによると、忍被告は高校中退後、一時ホストクラブで働き、朋美被告は客として訪れていた。2人は交際を始め、結婚。玲空斗君の死亡時、ほかに5人のきょうだいがいた。自宅アパートの前で、子供を遊ばせる姿を近所の住人らが見かけるなど、表向きは円満な家庭だったが、生活は困窮していた。

 アパートの住民によると、忍被告らは家賃のほか、アパートから数分のところにある駐車場の賃料も数カ月間滞納していた。一方で、頻繁に出前を取ったり、外食したりする姿も目撃されていた。アパートの関係者は「小学生の娘はいつもきれいな服を着ていた。週に2回は一家そろって車で遊びに出かけていた」と振り返る。

児童相談所(児相)に「次男の姿が見えない」と情報が寄せられたのは平成26年5月14日。2日後、児相はアパートに立ち入り調査に入ったが、布団で寝ていた6人の子どもの頭の数を確認しただけで、顔までは見なかった。この時点で玲空斗君は死亡していたとみられる。“頭数”が合致していたのは、忍被告らが調査の約2カ月前にインターネットで購入した身長約100センチの人形に布団をかけ、玲空斗君が生きているように偽装していたからだった。

 警視庁は同6月、玲空斗君の児童手当などを不正受給したとして忍被告らを詐欺容疑で逮捕。当時、忍被告は「児童手当の受給額が減ってしまうので死亡を届けなかった」と供述していた。一方、別の罪に問われた裁判で、玲空斗君の死を隠した理由を問われると「(虐待が発覚すると)子供が施設に入れられてしまうと思った」とも説明していた。

 家族の離散を恐れながら、その一員を自らの手で死に至らしめた両親。河口湖周辺には「家族全員で行った」などと供述しているという。皆で玲空斗君を見送ろうとしたのか。

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