事件・事故

首都圏連続不審死事件(婚活殺人事件)

一人の女性の周りでわずか2年の間に6人もの男性たちの不審な死が続いた事件。
3度目の獄中結婚のお相手はなんと、週刊新潮の担当デスク…。

首都圏連続不審死事件とは、2007年(平成19年)から2009年(平成21年)にかけて発生した連続不審死事件です。

「首都圏連続不審死事件」は、婚活を利用した殺人であったために「婚活殺人事件」や「婚活大量殺人事件」「婚活連続殺人事件」などという別名でも呼ばれています。

いったいいつ、どのようにして事件は起きたのでしょうか。本記事では、事件の発端や経緯、裁判の結果や犯人のその後について詳しく解説していきます。

事件の概要

警察の調べにより2007年から2009年にかけてのわずか2年間で、ある女性の周辺で多くの男性が自殺として亡くなっていることが判明し、またその自殺には共通点や不自然な点がみられました。

事件発覚の発端は、2009年(平成21年)8月6日、埼玉県富士見市の月極駐車場内にあった車内において会社員男性(当時41歳)の遺体が発見されたことでした。

死因は練炭による一酸化炭素中毒でしたが、自殺にしては不審点が多かったことから、埼玉県警察の捜査が始まりました。

そして、捜査の結果、当時交際していた住所不定・無職の女性「木嶋香苗(きじま かなえ、当時34歳)」が容疑者として浮かび上がりました。

捜査の進行とともに、木嶋には他に多数の愛人がおり、その愛人のうち何人かが不審死を遂げていたことなどから、埼玉県警はその女性が結婚を装った詐欺を働いていたと断定して、詐欺の容疑で逮捕に踏み切りました。

ちなみに、逮捕時に同居していた千葉県出身の40代男性からも450万円を受け取っていました。

その後の捜査により、木嶋の周りでは捜査のきっかけとなった男性をあわせて6人もの人間が不審な死を遂げていることが発覚。

警察は2010年1月までに、木嶋を詐欺罪などで7度も再逮捕しました。さらに、警察は詐欺と不審死の関連について慎重に捜査を継続し、2月22日には木嶋は殺人罪で起訴、10月29日には、東京都青梅市の当時53歳の男性を自殺に見せかけて殺害したとして、警視庁に再逮捕されました。

しかし、被害者男性の遺体は、当時は「自殺」と断定されて解剖されていない例もあり、死因に関する資料が乏しい中での、極めて異例の殺人罪の立件となりました。

犯行の動機・経緯

犯人の目的はわかりやすく、男たちの持つ金銭でした。

実際に不審死を遂げた男たちは犯人の女性に大金を貢いでいます。

また、それだけではなく、ほかの愛人たちからも大金をだまし取っていました。

また詐欺だけでなく、現金を財布から盗んだり、高価な絵画を盗んで売り払うなどの行為も行っていました。

数々の男性を手玉に取っていた犯人は、不審死を遂げた男性たちから判明しているだけでも合計1億円近くの金銭をだまし取っています。

木嶋の周りで起こった不審死

  1. 松戸市の70歳男性不審死事件
    2007年8月、千葉県松戸市の自営業の男性(当時70歳)が自宅の風呂場で死亡。死因不明。木嶋に貢いだ金額は約7400万円。
  2. 青梅市の53歳男性A不審死事件(起訴事案)
    2009年1月30日から1月31日に東京都青梅市の会社員男性A(当時53歳)が死亡し、2月4日に発見。死因は一酸化炭素中毒死。 死亡直前にAの銀行口座から木嶋の銀行口座に計1700万円が振り込まれていた。
  3. 野田市の80歳男性B不審死事件(起訴事案)
    同年5月15日に千葉県野田市の男性B(当時80歳)が自宅で死亡。B宅から出火して全焼。遺体近くの和室に練炭数個が置かれており、死因は一酸化炭素中毒死。 Bの父は著名な画家であり、木嶋はBの家の絵を盗んで高価な値段で売っていたが、Bは父の絵が無くなったことについて木嶋を疑わず、親族を疑っていた。死亡直後に、木嶋はBの銀行口座から約190万円を引き出した。
  4. 千代田区の41歳男性C不審死事件(起訴事案)
    同年8月6日に東京都千代田区の会社員男性C(当時41歳)が埼玉県富士見市の駐車場にとめたレンタカー内で死亡。死因は一酸化炭素中毒死。 木嶋はCに対して結婚する気があると装って、約470万円を受け取っていた。
  5. その他
    死亡日が不明だが、2件の男性(関東地方在住)の不審死がある。

犯人・木嶋佳苗の生い立ちと人物像

1974年11月27日、 町会議長を3期も務めた司法書士の祖父、元町長の妹である祖母、大学職員で行政書士の資格をもつ父、ピアノ講師の母のもと、北海道別海町に生まれました。

子どものころからピアノを習い、地元コンクールで優勝する程の腕前でした。

成績も優秀で、別海高校卒業後、18歳の時東京上京。

東洋大学に進学するも、中退し、ケンタッキーフライドチキンに就職。

その後、ピアノ講師、訪問ヘルパーへと職を転々としました。

これだけ見ると、名家出身の普通の女性のイメージをもたれるかと思いますが、幼少期から盗み癖がひどく、小学校時代には他人の家から貯金通帳を盗みました。

また、高校時代にもまた他人の貯金通帳と印鑑を盗む行為を働きました。そして、今回は実際にお金を引き出し、保護観察処分になります。

中学時代から援助交際をしていたと噂されており、実際に保護観察処分時には10歳年上の彼氏にそそのかされたと供述しています。

さらに上京後にはその犯罪は加速していき、年1月 (24歳) に化粧品の万引きで検挙、2000年3月(25歳)に本の万引き容疑で検挙、2001年4月(26歳)に現金窃盗容疑で検挙、2003年3月(28歳)にネットオークション詐欺で検挙(被害者は10名、2年6ヶ月執行猶予5年)などの、枚挙にいとまがないほどの犯罪歴がありました。

そして最終的に、婚活サイトでの活動を開始し、「結婚詐欺師」となりました。

結婚詐欺師となった木嶋佳苗

木嶋佳苗は、婚活サイトで活動を始めます。料理の写真をブログUPしたり、介護の仕事をしているとアピールして男性に積極的にコンタクトを取ってきます。

木嶋佳苗のターゲット

  1. 女性経験が少ない
  2. 寂しい男性

木嶋佳苗の戦略

木嶋佳苗は、婚活サイトで知り合った男性にすぐにアクションを起こします。それは、 次のようなものでした。

  1. すぐに男女の関係になる
  2. 避妊はしなくていい

というもの。

実際に、木嶋佳苗に会った男性は、彼女の容姿に一度は失望しますが、常に男をたてる従順な態度、かなりの腕前である料理の披露で献身さのアピール、鈴を鳴らすようなかわいらしい声で、「この女となら結婚してもいいかも」と思わせたそうです。

その手練手管は、木嶋佳苗をモデルとした寺島しのぶさんが主演した『ソドムの林檎 ロトを殺した娘たち』で見ることができます。

強引な手口

木嶋佳苗は、愛人となった男性とすぐ肉体関係を持ち、彼らを性技で籠絡していきます。自分で学んだりして独自に身につけたそうです。さらに「私は名器」と自慢していたとか。

しかし、婚活詐欺を働くときは、とても強引で攻撃的になります。愛人からお金を奪うときに送ったメールは、

「将来、料理学校を開きたいから、ル・コルドンブルーへの入学金を援助して。支払ってくれないなら、貴方との関係を考えさせてもらいます」

というもの。

決してそれほど男性を魅了するほどの容姿とは言い難い木嶋佳苗がこんな強気な態度を取れるのはちょっと意外ですよね…。

しかし、木嶋佳苗のターゲットはもてない男性たち。彼らは、木嶋佳苗が料理の腕をさらに上げてくれれば自分にとっても都合がいいと、料理学校のお金をあっさりと出してしまいました。

裁判

第一審(さいたま地方裁判所・裁判員裁判)

刑事裁判はさいたま地方裁判所において、全訴追事案(殺人3、詐欺・同未遂6、窃盗1)について併合審理となりました。

裁判員選任手続が2012年(平成24年)1月5日、初公判が1月10日、判決日が4月13日という裁判員裁判としては、約100日間にわたる長期裁判となりました。

木嶋側は殺人罪の無罪を主張しましたが、さいたま地方裁判所は検察側の主張を全面的に認め、木嶋に対し求刑通り死刑を言い渡しました。

女性被告人に対する死刑判決は裁判員裁判では初めてのことであり、木嶋側は即日控訴しました。

控訴審(東京高等裁判所)

控訴審の東京高等裁判所も第一審の死刑判決を支持し、2014年3月12日に木嶋側の控訴を棄却する判決を言い渡しました。

しかし、木嶋側はこれを不服として即日最高裁判所に上告しました。

上告審(最高裁判所)

2017年(平成29年)4月14日、最高裁判所第2小法廷は「殺害は計画的で極めて悪質。被告人は不合理な弁解で、反省の態度を全く示しておらず、死刑はやむを得ない」として、木嶋の上告を棄却する判決を言い渡した。

同年5月9日、最高裁は上告棄却の判決に対する木嶋の訂正申し立てを棄却し、死刑が確定した。

これにより木嶋は戦後15人目の女性死刑囚となり、同時に史上初の第一審・裁判員裁判による女性死刑囚にもなった。

2019年(平成31年/令和元年)現在、木嶋は死刑囚として、東京拘置所に収監されている。

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