マッチングアプリで知り合った2人、支援学校教諭が結婚後わずか1カ月半後に些細な口論から妻を殺害
2018年12月18日、大阪府豊中市の集合住宅で妻(26)を殺害したとして、大阪府警豊中署は殺人の疑いで同市西泉丘、府立支援学校教諭の元田壮容疑者(28)を逮捕した。
逮捕容疑は、15日午後4時から17日午後8時20分ごろまでの間に、自宅で妻の理子さんを殺害したとしている。
豊中署によると、理子さんは寝室で首に電気コードのようなものが巻かれた状態で倒れていた。また、近くには血のようなものが付いた刃物が落ちており、元田容疑者の体に刃物による切り傷が数カ所あった。
理子さんの親族が17日に「娘夫婦と連絡が取れない」と署に連絡があり事件が発覚。駆け付けた署員らが寝室で倒れている理子さんを見つけたが、間もなく死亡が確認された。元田容疑者も浴室で首をつった状態で見つかり、病院に搬送されたが、軽傷で18日に退院した。
逮捕後、元田容疑者は「妻の首を絞めて殺したが、首を絞めた理由は分からない」と供述した。
その後の捜査および公判で、犯行は「ウエディングドレスについての口論」が原因であったとわかっている。
事件の経緯と動機
二人は事件の半年前の昨年6月にマッチングアプリで出会って意気投合、すぐに交際を開始した。2018年11月には入籍し、翌年には海外挙式を控えていた。
元田は当時、府内の特別支援学校で勤務し、「大変だったがやりがいを感じていた」と供述。妻との関係については「出かけるときはいつも手や腕を組み、他と比べても仲の良い夫婦だったと思う」と述べ、充実した生活を送っていたかのようにみえた。
事件のきっかけとなったのは2018年11月下旬、結婚式のドレスの試着をめぐる口論だった。
妻がインスタグラムに試着写真をアップしようとしたところ、男は「露出が多い」と制止。スマートフォンを取り上げようとしたことでけんかは過熱し、警察が仲裁に入る事態となった。ただ、その後、二人はよりを戻したという。
そして12月16日。終わったはずのスマホの取り上げをめぐり、二人は再び口論になった。互いに感情が爆発し、3時間近くの激しい言い合いとなって、次のようなやり取りを行ったことが公判で明らかになっている。
妻「もう離婚したい。死んでほしい」
元田「じゃあ殺せよ。そうしたら離れられる」
妻「死んでほしいけど、家族に迷惑がかかる」
元田の供述によると、先に行動を起こしたのは妻だったという。台所から持ち出した包丁で夫・元田の頭を切りつけ、床に血がこぼれた。妻がそれ以上攻撃する様子はなかったが、男は妻を何度も殴りつけたという。
ここで終われば、行き過ぎた夫婦げんかで済んだかもしれないが、しかし元田は、その後の妻の言葉で「心の中で抑えていたものが、せきを切った」と話した。
妻「お前が殺せと言ったんやろ」
この言葉をきっかけに、元田はそばにあった電気毛布のコードで、背後から妻の首を絞め続けた。動かなくなった姿を見て、自分の犯した罪を自覚したという。
一方、その後に取った行動は、妻への愛情を一切感じさせないものだった。
男は激しく争った形跡を偽装するため、自らの首や体を包丁で切りつけ、「妻が包丁を振り回した」という嘘のメモを残した。そして、救急車や警察を呼ばないまま浴室で自殺を図ったが失敗。親族の通報で翌日に警察官が発見するまで、妻の遺体はその場に放置されたままだった。
裁判とその後
被害者参加制度で法廷に立った妻の遺族は「男は嘘をついている」と涙をこらえ、厳刑を求めた。一方、男の弁護側は妻の攻撃に対する過剰防衛だったとして、酌量を求めた。
2019年11月7日の初公判。細身で色白の被告の男は、傍聴人で満席の法廷へ、うつむきがちに現れた。
「忘年会早く終わらんかな、会いたい」
「一緒に家でラブラブしたいね」
弁護人が読み上げたのはLINEでの二人のほほえましいやりとりだった。日付は2018年12月14日、事件のわずか2日前だった。
2019年11月13日の判決。森島聡裁判長が言い渡したのは、懲役10年(求刑懲役12年)の実刑判決だった。
森島裁判長は元田の行動について「殴る行為とコードで首を絞める行為は明らかに異質で、過剰防衛にはあたらない」と認定。その上で「被告は妻からの攻撃で負傷したが、そこに至る経緯は妻だけに責任があるものではなく、殺されるほどの落ち度はなかった」とし、犯行後の偽装工作を「身勝手な動機で妻の尊厳をおとしめた」と指弾した。
公判で「幸せにしてあげられなくて申し訳ない」と妻に謝罪した元田だったが、わずか1カ月半に終わった短い新婚生活は、最悪の結果で幕を下ろした。