事件・事故

静岡・女子高生母親毒殺未遂事件(「タリウム少女の毒殺日記」事件)

「タリウム少女の毒殺日記」として映画化もされた、女子高生による母親毒殺未遂事件

進学校に通う成績優秀な女子高生(当時16歳)が、実験的に実母に猛毒タリウムを飲ませ、日々弱っていく様子をブログでアップした事件。

少女はロンドンのグレアム・ヤングという殺人鬼を敬愛しており、彼女の行為にはその影響が色濃くでている。

妹が猫を毒殺したことを知っていた兄が、医師に相談し、その医師が警察に通報して発覚。女子高生は大量の睡眠導入剤を飲んで自殺を図るが、入院で留まり、2005年10月31日に体調の回復をもって、逮捕となった。

また、事件後、この事件をモチーフにした映画「タリウム少女の毒殺日記」も公開され、話題となった。

事件の経緯と詳細

2005年4月、劇物ビスを薬局で購入。化学部の実験というだけで、いとも簡単に入手できたという。

同年6月27日、楽天日記で、ブログをはじめる。ハンドルネームは「岩本 亮平」で、16歳の男子の設定。化学に関する専門的かつ理論的な解釈を時折、記していた。

ブログ『Glmugnshu―グルムグンシュ―』

8月14日、全38回にわたってメールマガジンを発行する。発行部数は1回につき、約30部前後だった。

8月17日、ハムスターのアンチモンに対する耐性及びアンチモンの毒性に関する調査を2週間かけて記事にアップする。最終的に、自分自身で解剖をしたように読み取れる記述がみられた。この頃から、母親に対してもタリウムを摂取させ始めていたとみられる。

8月19日、ブログ記事に母親の体調が悪いことを記す。この後も、具体的な様子を記事に載せる。自分の体調の悪さも細かく分析して記述した。

8月24日、近くの薬局でタリウムを購入。女子高生としては「簡単に入手できた」らしいが、薬局は「夏休みの宿題で必要である」からと押し切られて売ったと話した。

8月25日、2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)に酢酸タリウムを購入した件を投稿。(※真偽は不明だが、実際の購入日とは一致する)

9月25日、母親が、明日入院することを記す。

10月2日、母親が救急車で入院したと記す。

10月11日、学校で、母親のことを泣きながら話し同情をひき、「簡単にできるものだ」と記述。

10月16日、最後の更新記事。

蒼ざめた馬の通る道に、規則は存在しない。暗闇を進む足跡は草木を枯らし、死を招く。其処に生命は宿らない。在るのは寂しい同じ形。

10月20日、母親の症状について、兄が医師と警察に相談する。以前に妹が猫を毒殺した件、今も挙動不審な点があるなどを話す。また、当該女子高生が大量の睡眠導入剤を飲み、入院する。

10月31日、女子高生の回復を待ち、逮捕となった。

11月10日、警察は少女がタリウムのほか、アンチモンなど30種類もの薬品を所持していたことを確認した。イギリスの連続毒殺犯グレアム・ヤングの事件を模倣したとの見方が強まり、また、少女は「ブログは自分のものである」とを認め、「現実に創作を加えたもの」と供述した。

少女の生い立ち

小学校のときには、飼育係として小動物をかわいがる姿が見せた。成績優秀であり、中学でも学年で10位以内に入っており、高校は、地域でも有数の進学校の理数科に進学し、化学部に所属。

しかし、中学の卒業文集では、「好きな芸能人」の欄に「有名人(あまり有名ではないかもしれないが)ならグレアム・ヤング」と、英国の毒殺犯の名を挙げた。

また、事件後少女の部屋からは、切り刻まれた動物の死骸や解体標本、ヤングの著作「毒物日記」、ナチスの写真などが発見されている。

周囲の生徒たちの話によれば、彼女はリーダーシップを発揮するようなタイプではなく物静かだが、特別暗いタイプではないとのこと。中学のときには、文化部の部長も務めていた。

ブログの中では、いじめられていたことを示唆する記述もあったが、関係者からはいじめに関する情報は発信されていないため、真偽は不明。

近所の人の話によれば、少女の家族は「仲の良い家族」と見られており、警察の調べでも、母親との間に特別な確執はなかったと判断されている。

また、少女は入院中の母親のことを、「好きでも嫌いでもない」と供述した。

判決とその後

2005年11月14日、地検沼津支部は、鑑定留置を沼津簡裁に請求。精神鑑定のため、12月17日までの鑑定留置が認められる。

2006年5月1日、5回目の少年審判が静岡家裁沼津支部で開かれた。医療少年院送致とする保護処分となり、期間は「相当長期間」とされた。

「少女は幼児期から発達上の問題があり、人格のゆがみも認められる。是非を識別し、行動を制御する能力がある程度阻害されていた」と認定され、その上で「審判で 否認から非行事実を認めるに至っており、非行の重さと向き合う出発点に立った」と結論付けた。

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